小泉徳宏 『ガチ☆ボーイ』(2007) ☆8.2YUIちゃん主演の前作『タイヨウのうた』がメチャメチャ傑作だった小泉徳宏監督の二作目。ネットで調べて初めて知ったんだけど、原作は劇団
モダンスイマーズの舞台『五十嵐伝〜五十嵐ハ燃エテイルカ〜』という作品らしいです。主演の五十嵐良一役に
佐藤隆太で、共演がサエコ、仲里依紗、
泉谷しげる、といった感じです。僕は小泉監督の前作『タイヨウのうた』が個人的にめっちゃ好きで、この監督には密かに期待しているんですけど今作は正直言うとちょっと期待はずれな感じでした。とりあえず、あらすじ。↓

大学生の五十嵐良一は、ある日の帰宅途中に
自転車で転倒し、頭を打ったその日以来、一晩眠ると昨日の出来事をまるで覚えていないという記憶障害を患っている。しかし、五十嵐はその転倒事故直前に見たプロレス研究会の試合を、その感動とともにしっかりと記憶していて、その記憶を頼りに自ずとプロレス研究会の扉を叩く。一方、プロレス研究会はというと去年のスター選手だった
ドロップキック佐田(川岡大次郎)が退部して以来、低迷状態にあり、不意に訪れた新入部員の五十嵐を快く迎え入れる。記憶のことを打ち明けないまま必死に練習し、プロレスの
段取りを覚えようとする五十嵐だったが、やはり物覚えが悪く、本人も部員たちもやきもき。そんな不安を残したまま、軽い
イベントだからということで商店街での
デビュー戦が決まり、晴れて「
マリリン仮面」として五十嵐はリングに立つのだけど、案の定、段取りをド忘れ。先輩レスラー・デビルドクロ(小椋毅)相手に筋書きのないガチンコ勝負をしてしまう。流血、失神の散々な勝負だったにもかかわらず、しかし何故か観客には大ウケ。で、その試合をきっかけに、なんと学生プロレスの人気スター・シーラカンズから試合のオファーが舞い込むことになるのだが‥‥。
悲劇のヒーローorヒロインで泣かせる類いの話って基本的にキライなんですけど、小泉監督の『タイヨウのうた』とかはその流行りの企画を踏襲しつつも、実にあっさりとウェットになり過ぎず描いてたと思うんですよね。それは無駄にカットを割らない編集やシンプルな撮影にスゴく表れててそこがめちゃくちゃ好印象で、そういう視点では本作もその押し引き加減というか、やはり抜群に上手いと思うんですけど、全体的になんとなく予想の域を出ない感じもある。
ちょっとクドカンっぽい、あっさりとしたしょうもないギャグセンスとか、記憶障害故にマネージャーの麻子(サエコ)に何度も告白してはふられるバスの中のシーンとか、父親である泉谷しげるの苦悩とか良いところはいっぱいあるんですけど、でも故に勿体ないと思うのは主人公の五十嵐がプロレスをやっている時だけは生きていると実感するっていう、そのビビッドな感じがイマイチないような気がするんですよね。記憶は蓄積されないとしても筋肉痛の痛みとか徐々に逞しくなっていく体とか、身体に刻まれたモノは残っていくっていうことがプロレスを志向する理由になってると思うんだけど、その身体的な喜びみたいなのがあんまり伝わってこないというか‥‥。『300』で描かれたスパルタ兵の戦闘狂みたいな感じというと言い過ぎかもしれないけど、最後のリング上で倒されても何度も立ち上がってくるのは「仲間やチームの為に絶対勝つんだ!」とかそういうことじゃなくて、この勝負によって身体に残されるモノ(痣とか打撲とか)だけが明日の自分に繋がってるっていうようなそういう想い故に「やめられないでしょ」っていう方が、グッと来るんじゃないかなあ、と。ボロボロなんだけど、なんかどことなく楽しそうな感じとかね。
と、まあちょっと辛口ですが、別に駄作とかではないので小泉監督には引き続き期待です!
予告。↓