2008年03月02日

幸福のスイッチ。

安田真奈 『幸福のスイッチ』(2006) ★8.8

稲田家の大黒柱、誠一郎(沢田研二)が切り盛りする小さな電気店「イナデン」は、損得感情を抜きにしてお金にならないこまごまとした物の修理やら蛍光灯の交換やら、ひいては一人暮らしのおばあちゃんの家具の移動までを一手に引き受ける人情味溢れるお店なんだけど、次女の怜(上野樹里)は家族を顧みずにお客の相手ばかりしているそんな父親が嫌いで(母が死んだのも父が無理をさせ過ぎたからだと思っている)、東京の美大に通うと無理を言って家を出たのだったが、卒業後に就職したデザイン会社の上司ともめてそのままの勢いで会社を辞めてしまう。そんな時に、実家の妹(中村静香)から「お姉ちゃん(本上まなみ)が倒れて絶対安静の状態だから、帰ってきて店を手伝ってほしい」っていう手紙が届き、怜は実家へ戻るんだけど、実際に入院していたのは屋根から落ちて脚を骨折した父親の誠一郎で(お父さんが怪我したって言っても怜が帰ってこないと読んで、妹が騙した)、しかし実際店の経営は大変だということで、怜は嫌々ながら一ヶ月だけ「イナデン」を手伝うことになる。
展開としてはこれ以降もまあべタっていえばベタで、怜は渋々つまらない仕事を続けていくうちに父の「イナデン」に対する思いを徐々に理解し、許すことができるようになってきて、一人で腐って周りに当たり散らしてる自分が恥ずかしくなってきて、もう一度東京で頑張る!っていう感じになるんですが、しかしこの素朴な話がなんかめちゃくちゃいいんですよね。確かに、ベタな物語なんだけど、要所要所にイイ感じに笑いもあったりして非常に爽やかだし(自動の餅つき器をみんなで眺めるとことか微笑ましい)、健気に店を手伝う三女の香も元気で可愛いし、優しい長女・瞳の言葉もまた沁みる(関西弁っていうのがまたズルい)。ジャンルで言えば、最近の邦画に多い感動モノに連なるんだろうけれど、登場人物が涙する場面っていうのが一回、しかもその怜の泣き顔がしっかり映されない形でしか出てこないっていうのも、上手く涙涙の展開を避けてるのが見受けられて、僕はその慎ましさに逆に泣きました。現代的なフラット感とポップさを維持しながら、重要なところではしっかりと力を込めるっていうこの感じは『ハチクロ』にも共通するような、現代の日本の商業映画の理想的な在り方なんじゃないかと思った。強いていえば、もっと撮影や編集で遊べたんじゃないかと思うけど、でもスゴくいい映画なのは間違いありません。

あと、ちょい役で石坂ちなみちゃんが出てて、ちょっとしたお得感アリ。彼女にはもっといろいろ出てほしいなあ。



公式サイト。↓

http://www.shiawase-switch.com/
ラベル:邦画
posted by ケニー at 20:37| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

パニック・フライト。

ウェス・クレイヴン 『パニック・フライト』(2005) ★9.3

「スクリーム」シリーズで名を馳せたウェス・クレイヴン監督のアクション・サスペンス・スリラー。タイトルから察するに航空機内でのパニックホラーを想像させますが、むしろ機内ではジッと耐える系の恐怖に身悶えする感じで、俄然映画のテンションが上がるのは航空機が着陸してから。ストーリーは、ネタバレになるのであまり書けませんが、一流ホテルのマネジャーとして働くリサが祖母の葬儀から帰宅しようと深夜の最終便に乗るところから物語は始まります。んで、偶然にも彼女の隣の席に座ったのが、搭乗ゲートで男に絡まれたところを助けてくれたジャクソンという男で、この奇跡的な出会いにリサは何となく運命的なモノを感じてときめくんだけど、しかし、すぐにそのときめきは消滅し、予期せぬ恐怖劇が幕を開ける。フーパーの『遺体安置室』もそうだったけど、きっとキャストが地味だからとかっていう他愛もない理由なんだろうけれど、こういう傑作を未公開にするっていうのはホントに日本の配給会社の目は節穴だと思うよ。ホントに本編をちゃんと観て判断してるんですかね。ウェス・クレイヴンの機内でのタイトで引き締まった演出もさることながら、飛行機が着陸した瞬間からの怒濤の「スクリーム」な展開は、もう抜群にテンション高いし、編集のテンポも最高に冴えてるし、リサの行動力と勇気に大いに燃えるし、なかなか最近ではこんな迫力のある映画にはお目にかかれないと、僕は思うんですけど。こういうのが未公開っていうことは、まだまだ僕らの目に届かない傑作がアメリカ本国にはわんさかあるんだろうな。あー、もったいない。とりあえず、『カースド』とクレイヴンが脚本を担当した『ヒルズ・ハブ・アイズ』を観て、溜飲を下げよう。



フランス版の予告です。↓ウェス・クレイヴンってかなりヒッチコックに影響受けてる気がする。

ラベル:サスペンス 洋画
posted by ケニー at 20:30| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。