2008年04月30日

ヘビだらけ。

デヴィット・R・エリス 『スネーク・フライト』(2006) ☆8.0

サミュエル・L・ジャクソン主演、『デッドコースター』のデヴィット・R・エリス監督のB級パニック・アクション。内容はタイトルの通り、飛行中の機内に大量のヘビがバラまかれての大騒動です。
ハワイを訪れたサーフ青年、ショーンは偶然にも大物ギャングとして知られるエディ・キムの殺人現場を目撃してしまって、命を狙われるハメになる。そこにカッコ良く登場してくるのがサミュエル・L・ジャクソン演じるFBI捜査官のネヴィル・フリンで、ショーンを殺人の証言台に立たせ、キムを有罪にするために彼の保護にあたるんだけど、裁判所があるLAに向かう飛行機の中、エディ・キムが墜落事故に見せかけて皆殺しにしようと仕掛けた「時限ヘビ爆弾(!)」が爆発し、機内は毒ヘビだらけになって大パニックに!
なんて回りくどい殺し方だろうって気がしますが、ヘビは変温動物だから探知機に引っかからずに税関を通過できるんですね。さすが、殺しのプロ。なかなか頭が切れる。ハワイを出立する際に首に掛けられるレイに、ヘビを興奮させるフェロモンを染み込ませておくことも決して忘れない(基本、ヘビはめったやたらには人を襲いません)。これによって興奮状態に達したヘビたちは乗客に襲いかかり始めて、同じく興奮を抑えきれずに機内のトイレでセックスを始めてしまったカップルがまずは最初の餌食となり、そのカップルの断末魔の叫びが外に漏れ聞こえて、おばちゃんアテンダントが「まあ、激しい。私も若い頃、思い出すわ」とか言うような序盤のゆるい展開があってのち、徐々にサバイバルな険しい状況になっていきます。乗客たちはヘビに追いつめられて最終的に、ショーンの護衛の為にFBIが特別に貸し切った2階のファーストクラスへと移動し、そこに篭城して闘うことになる。最初は、ネヴィルに大事な証言者だからじっとしてろって言われて何もしないでいたショーンも、この辺から率先してみんなを助け出したりし始めて、こういう「自分にできることをやらなきゃ!」みたいな感じいいですよね。で、ラスト間近のクライマックス、FBIのネヴィルがついにブチキレて「このくそヘビどもが!全部まとめて外に放り出してやる!」って言って、飛行機の窓を銃で撃つんですよ(!)。一応、その前に乗客たちにシートベルトやらロープやらで体を固定するよう言うんだけど、なんて無茶な発想なんだ‥‥(『シャフト』のサミュエル・L・ジャクソンを彷彿とさせる狂いよう)。当然、気圧が一気に下がった機内からはヘビやら荷物やらが空中にボンボン飛んでいって、みんな体が浮き上がって「もうちょいで着陸だから頑張れ!」って言ってて、で、操縦してるのはヘビにやられた機長に代わってビデオゲームでしかフライト経験のないデブの兄ちゃんっていう。やってて良かった、ビデオゲーム。



予告。↓


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2008年04月29日

手紙です。

生野慈朗 『手紙』(2006) ☆8.0

東野圭吾原作の同名小説を、山田孝之、沢尻エリカ、玉山鉄二などを出演者に迎えて映画化。玉山演じる武島剛志は、ある資産家の家に強盗に入り、出くわした老婦人を誤って刺し殺してしまい服役している受刑者。その弟である直貴(山田孝之)は、そんな兄を励まそうと欠かさず手紙をやり取りしているんだけど、殺人者の弟に対する社会の風当たりは強く、会社の誰とも心を通わせずにひっそりと生活している。でも、直貴にはお笑い芸人になりたいという夢があって、中学時代からの親友と二人で昼休みに漫才の練習をしたりしていて、それを食堂の調理場から嬉しそうに眺めているのが、沢尻エリカ演じる由美子。この後、直貴はお笑い芸人として頑張っていこうと決心し、その努力も徐々に報われて期待の新人コンビみたいになっていくんだけど、ここでもまた実の兄が殺人者だということが世間にバレてしまい、決まっていたCMなどがオクラになって、これ以上相方を巻き込むのは忍びないと考えた直貴は自らコンビを解散してしまう。再び職場を転々としながら、こんな状況を招いた兄貴に対する憎しみが募り、直貴は手紙をいつしか書かなくなり、兄からの手紙だけがどんどん増えていく‥‥。
これは加害者の家族に対する世間の差別感情をモチーフに「贖罪」というテーマを描いたなかなか重いドラマだと思うんですけど、そこに結構唐突に出てくる「お笑い」っていう要素がいいなーと思いました。そのギャップっていうか重々しいからこそ笑うんだっていう心持ちがすごく健全でポジティブな意識だと思うし、『ナチョ・リブレ』とか『バス男』とか思い出したんだけど、でも今作はコメディではないんですね。映画のラストで、元相方からの誘いで一日だけ芸人に復帰した直貴が、兄の服役している千葉の刑務所に慰問に行ってネタをやるっていう『ウォーク・ザ・ライン』みたいなめちゃくちゃ良いシーンがあるんだけど、ちょっとやっぱり湿っぽい。まあ、そもそもシリアスなドラマだし、クライマックスだからそういう感じになるとは思うんだけど、この最後の舞台でこそ観てるこっちも腹を抱えて笑えるめちゃくちゃにバカバカしい芸が、僕としては観たかったな。悲惨な現実に立ち向かうために選んだ武器が「笑い」っていうところまではすごく良いし、かなり傑作な予感がするんだけど、でもそれにしてはその「笑い」の精神がこの映画には足りないような気がしました。これだとお笑いじゃなくて、ミュージシャンとかでもあまり変わらないというか、「笑い」によって救われている感じがあまり伝わってこなかった。でも多分、制作者的には「笑い」よりも沢尻エリカの担う「愛」こそがこの現状を救うんだっていう意図で作っていると思われ、確かにそれはよく分かるし、相変わらず沢尻エリカも好演してるんだけど、そうなるとやっぱり芸人にする必要性が僕にはピンときません。むしろ芸人だったら絶対、殺人者の兄貴をネタにして笑いを取るしかないと思うし、その姿にこそ感動するんじゃないかな。



予告。↓


タグ:邦画
posted by ケニー at 02:28| Comment(2) | TrackBack(0) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年04月27日

鉄コン。

マイケル・アリアス 『鉄コン筋クリート』(2006) ☆8.6

松本大洋の人気コミックを『マインド・ゲーム』のスタジオ4℃の制作で映画化。監督は『アニマトリックス』のプロデューサー、マイケル・アリアスで、声優陣は、蒼井優、二宮和也、宮藤官九郎、伊勢谷友介などが担当してて、なかなか豪華。
ストーリーを簡単に説明すると、周辺の再開発が進む中で唯一、昔ながらの町並みを残している下町、宝町が舞台。そこではヤクザからも一目置かれる不良少年のクロとシロという二人組が町を仕切っているんだけど、ある日、再開発の魔の手が彼らのプレイグラウンドである宝町にも及んでくる。悪徳土建屋(?)の金の力で地元のヤクザも丸め込まれ、邪魔者であるクロとシロは奴らが雇った殺し屋から命を狙われる。そんな権力闘争のさなか、シロが重傷を負って、止むなく彼を警察の保護下に置くことをクロは了承する。ずっと一緒に生活してきたシロと別れ、一人で町を守ろうと闘い続けるクロ。しかし、純粋で無邪気な部分を担っていたシロがいなくなったことでクロの精神はどんどん不安定になり、殺伐としていくのだった‥‥。
「クロ」と「シロ」という名前からも分かる通り、この二人はそれぞれ世の中の「黒い部分」と「白い部分」を象徴していて、主に現実面での暴力を担当しているのがクロで、シロは面白いから彼にくっついて一緒になって遊んでいるような無邪気で空想的な存在で、クロに手伝ってもらわないとパンツも自分で履けないような子供なんですね。クロは劇中で何度も「俺がいないとシロは何もできないからな」とお兄さん口調で言うんだけど、でも実のところクロの方がシロを必要としている、シロに守られている存在だっていうことが後半で露になってきて、その関係の切実さに泣ける。これは以前に紹介した『ツォツィ』の赤ん坊と主人公ツォツィの関係と同じで、それを守ることで自分自身もそれ以上堕ちずにいられるっていうギリギリの均衡を保っている状態な訳です。これはもうほとんど男女の恋愛関係に似たあり方だなあと思われ、この映画にヒロインとなるような主要な女性キャラクターが出てこないのは、そういう意味では納得がいきます。あと、読んだことないけど、『ワールド・イズ・マイン』ってこんな感じなのかなって思いました。あっちの方がもっとずっとハードなんだろうけど。
蒼井優ちゃんが、能天気でとぼけたキャラのシロを好演していてナイスです。



予告。↓


posted by ケニー at 01:03| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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