2008年05月17日

ジョゼ観ました。

犬童一心 『ジョゼと虎と魚たち』(2003) ☆8.0

今更ながらやっと観ました。池脇千鶴ファンでコレを観てないなんていかんいかんと思いつつも、脱ぐとか脱がないとかいう噂がちらほら聞こえてきてちょっとドキドキしながら観たんですけど、千鶴ちゃんあっさり脱いでてカッコ良かったなー。日本の女優さんってホントにみんな脱がないからね。
簡単にあらすじを説明すると、主人公の恒夫(妻夫木聡)は雀荘でバイトしながら大学に通っているどこにでもいそうな普通の若者なんだけど、ある日の早朝、雀荘のマスターから愛犬の散歩を頼まれ、人気のない住宅街を歩いていると坂道を乳母車が滑走してきて、恒夫の目の前で壁にぶつかって止まる。恒夫は雀荘で聞いた「乳母車を押す妙な婆さん」の話を思い出し、戦々恐々。曰く「その乳母車の中身は誰も知らない」という。で、その乳母車に恐る恐る近づき、そこに掛かってる毛布を除けると、実は中には池脇千鶴演じるくみ子がいて、彼女は足が悪くて歩けないので婆さんが乳母車で散歩に連れて行っていたワケです。恒夫は何となく成り行きでくみ子=ジョゼと婆さんの二人暮らしの家にお邪魔して朝ごはんをご馳走になって、それ以降もちょくちょく遊びにくるようになってジョゼとちょっとイイ感じになって、と、まあそういうことになる。この恒夫っていうのは基本的に安い人間でして、イケメンゆえ女性関係にも不自由しないから女の子を取っかえ引っかえしてて(イライライライラ)、僕が最高にムカついた&ある意味秀逸だと思ったシーンが、朝ご飯を一回ご馳走になっただけのクセに、コイツは次に訪ねて行った時、あろうことか玄関先で「あー、オレ。オレだけど」って言うんですよ!第一声がオレって!一回飯食っただけで大黒柱気取りか!テメー!もう、ね、この瞬間に完璧コイツの激安人間っぷりがよーく分かって、これはすごく上手いなーと青筋がピクつきながらも感心しました。そしてまた妻夫木がすごく「っぽい」。このダメ爽やかな感じというか、人生ナメ切ってる感じというか。この辺でハッピーエンドではない感じっていうのが早くも察知されたんだけど、でも思ったより堕ちていかない。僕が観ながらイメージしたのは、最近良くある身内を何年も監禁するような一連の事件で、このプロットはもっと悲惨で醜悪なモノになる可能性を秘めていて、リアルに描こうとすればそうならざるを得ないような気がするんだけど、これは何となく寓話的にフワフワしている。ジョゼの境遇はつまるところ「可愛いくて足が不自由でツンデレな女の子」っていう萌え要素=幻想でしかなくて、恒夫が最終的に元サヤの彼女(上野樹里)に戻るのもよく分かるし、それが狙いだと思うんだけど、でも、この幻想が作っている側からも実は無意識に共有されてる気がして、なんかどうにも釈然としない。恒夫が親戚の法事にジョゼを紹介する為に連れて行こうとして、途中で気後れしてやめるシーンがあるけど、あれはそのまま作り手の気後れを表してるような気がするんですよね。だって、そもそも婆さんはジョゼを恥ずべき欠陥品だと思ってるのにわざわざ散歩に連れて行ってるし、隣の変態はなぜかジョゼのおっぱいにしか興味ないし、なんか変に親切な設定だなーっていう。別に悲惨で醜悪にすればいいってもんじゃないものの、ジョゼが恒夫以外の男とセックスする描写は必要なんではないかな。隣の変態か、施設仲間の幸治(新井浩文)か、あるいは別の誰かと。そうじゃないと幻想はいつまでも維持されて、結局ファンタジー世界の出来事みたい。二次元美少女にハマっちゃって、こりゃいかんってなってリアル彼女の方に戻ったみたいな。どうせファンタジーなら、いきなりジョゼの足が治って歩けるようになったことで何ら普通の女の子になってしまって、とかそういう展開とかがあったら良かったような。まあ、全然悪い作品じゃないけどね。くるりの音楽もいいし。



予告。↓


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2008年05月16日

蟲。

大友克洋 『蟲師』(2006) ☆9.4

『AKIRA』、『スチームボーイ』の大友克洋監督が漆原友紀の同名コミックを実写映画化したヤツです。主人公のギンコをオダギリジョーが演じてて、鬼太郎・ウエンツ同様これまた白髪に片目が隠れたキャラクター造形で、これはなんかの流行りなんでしょうか。しかーし、そんなことは全然問題じゃなくて、これは誰が何と言おうともうチョー傑作じゃないですか!?毎度のことながらアニメ・マンガ原作はその駄作の多さからちょっと恐る恐る観賞する訳なんですが、これはびっくりするぐらい良く出来ててホントまさしくびっくりしましたっ!いやー、これスゴいわー。やっぱり映画は観てみないと分からないもんだなあ。っていうか、まあ大友監督はそんな駄作を作るようなレベルの人じゃないとは思うんだけど、監督が誰かさえ知らずに観てて「この監督はヤバいなー、誰だろー?」って思ってたらエンドクレジットで大友克洋の名前が出てきて「なるほど」とちょっと納得した感がありましたよ!加えて、漆原友紀の原作の世界観やそのスケール感もスゴくいい(今作はかなり原作に忠実に作ってるんじゃないかなー?)。例えるなら、『もののけ姫』と『ナウシカ』と『ハンター×ハンター』と水木しげる的妖怪世界を掛け合わせたような幻想的なジャパニーズ・ゴシックっていう感じです。
内容が込み入ってて大変なんで簡単に説明しとくと、時代は今から100年前(明治かな?)の日本っていう設定で、「蟲師」と呼ばれる様々な蟲の及ぼす悪影響を取り除く蟲専門の医者のような職業が存在してて、その一人がオダギリ演じるギンコです。彼は薬の行商人みたいに各地を転々としながらその土地土地で蟲が原因で起こる超常現象的な被害を解決している。で、訪れた先の屋敷に住む娘、淡幽(蒼井優)の体に異変が起きてその症状を取り除く為にギンコは奔走するんだけど、その渦中でギンコ自身に宿る蟲の存在が明らかになって‥‥。っていう、設定が凝ってるんでかなり端折ってますが、なんかこの世界全体を「人間ならざるもの」が取り巻いているっていう空気感がじんわり伝わってきてゾクゾクします。映像における光と影のコントラストもすごく奇麗だし、CGの使い方も抜群に冴えてる。「虹蛇」(漢字合ってるかな?)っていう蛇のようにうねって輝く特別な条件下でしか見れない虹が出てくるんですけど、そのシーンとかホントに美しい。ずっとアニメーションを作ってきただけあって大友監督はその使い方を熟知してますね。実写とCGとの馴染み具合が素晴らしいです。ラストは結構唐突に終わって「え、終わった!?」って動揺したんだけど、あれって原作を読んでるともうちょっとよく分かるんですかね?最終的にどういうことになったのか良く理解できなかったんだけど、でもあのふわーっと消えていくようなラストはすごく幻想的で素敵でした。吐息混じりに「アァ‥‥」って感嘆しますよ。日本映画はこの水準で製作してれば問題ないのにな。あと、ぜひとも続編作ってほしいです。



予告。↓


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2008年05月15日

恋愛睡眠おすすめ。

ミシェル・ゴンドリー 『恋愛睡眠のすすめ』(2005) ☆8.9

『ヒューマンネイチュア』で長編映画デビューを果たしたPV監督出身ミシェル・ゴンドリーの三作目となるラブストーリー。主演の青年ステファンを『アモーレス・ペロス』のガエル・ガルシア・ベルナルが、ヒロインのステファニーをシャルロット・ゲンズブールがそれぞれ演じています。ミシェル・ゴンドリーって今まで観たことなかったんですが、いやーこれはかなりイイですね。こんなピュアな物語は久々に観たような気がする。どことなくウェス・アンダーソンの描くファンタジー世界に似ているというか。
ストーリーを説明すると、父親が癌で亡くなったのをきっかけにしてステファンは今まで暮らしていたメキシコから、別居中の母親が住むパリへと戻ってくる。彼女が大家として管理するアパートの一室に居を構えたステファンは、母の紹介してくれたカレンダーの制作会社でイラストレーターとして雇ってもらう予定だったんだけど、行ってみると実はレイアウトの仕事だと言われて、「こんなの最低だ」と愚痴りながらも渋々働くことに。そんな折に隣の部屋に引っ越してくるのがステファニーで、ステファンは知的でクリエイティブな雰囲気を持った彼女にどんどん惹かれていくんだけど、「私、恋人はいらないの」と拒絶されてしまう。上手くいかない現実に対して、夜な夜な夢の中だけで自分の理想郷を作り上げるステファン。そこでは威張り散らしている会社の社長を窓から放り投げ、オフィスの壁には自分の絵が何枚も飾られ、隣にはステファニーがいるというまさに夢のような世界なんだけど、徐々にその妄想が現実とごっちゃになっていってしまう‥‥。
ステファンが引っ越してきた部屋っていうのは、かつて少年時代に自分が暮らしていた内装や家具などがそのまんま残っている子供部屋なんだけど(ここは実際、ミシェル・ゴンドリーが幼少期に暮らしていた部屋らしくて、ステファンはつまり自伝的な人物として描かれています)、これは未だにステファンが子供の頃のファンタジーを捨て切れていない、良くいえば子供の心を持ったピュアな青年っていうことを表してて、でもだからこそステファニーとの恋愛は上手くいくはずもなく、すごくみっともない。彼女と会うたびに言わなくてもいいような下ネタを口走ったり、彼女が他の男と楽しそうにしてるだけで飲んだくれて支離滅裂なことを叫んだり、留守中の彼女の部屋に侵入して、壊れてるポニーの人形を勝手に直そうとしたのがバレて変態扱いされたり、もうホントに不器用で病的で最後も全くハッピーエンドじゃないんだけど、でもこの悲劇にはどことなく幸福な雰囲気が漂っていてそこがとても感動的です。おそらくそのハッピーな雰囲気っていうのは、ミシェル・ゴンドリー自身が子供の頃から抱いてきたであろうアニメーションに対する愛情が源泉だと思われる。修理を終えたポニーの人形がピアノの鍵盤の上で元気に踊っているところとか、段ボールで出来た車で逃げるところとか、蛇口をひねると水色のセロファンが出てきたりとか、そういった原初的な想像力というか空想力というか、そういったイメージが素晴らしい。本作はフランス映画なんだけど、フランスといえば僕の中で真っ先にあがる名前がジャン・ヴィゴっていう1930年代とかに活躍した監督で、彼の『新学期操行ゼロ』っていう作品の中に、子供たちが書いたノートの落書きが動き出すっていうシーンがあって僕はすごくびっくり&感動したんですけど、この『恋愛睡眠〜』にもそれに似た自由さが感じられてすごく瑞々しいです。フランス映画っていうのは僕の印象だと、そもそもそういったピュアな想像力の賜物だったような気がするんだけど(そんなにフランス映画に詳しくないですが)、いつからかすごく高尚な感じになっていってしまったのがちょっと残念っていえば残念な気もする。

それはそうと、ジャン・ヴィゴのDVD-BOXってリリースされてるんですねー。コレはめちゃくちゃほしいなー。↓



予告。↓


posted by ケニー at 05:24| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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