2008年06月29日

SECUESTRO EXPRESS(原題)。

ジョナサン・ヤクボウィッツ 『ベネズエラ・サバイバル』(2005) ☆6.8

ヴェネズエラ出身の監督ジョナサン・ヤクボウィッツによる貧困と犯罪の絶えない祖国の現状を描き出した犯罪アクション。劇場では未公開。印象としては『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』とか『スナッチ』とかの小気味良く、器用な犯罪映画をやりたかったけど、上手くいかずバタ臭い感じになってしまったような、そんな感じを受けました。

舞台はヴェネズエラ・カラカス。強盗や誘拐をくり返して生計を立てているギャングであるトレセ(カルロス・フリオ・モリーナ)、ブドゥ(ペドロ・ペレス)、ニガ(カルロス・マデーラ)の三人組は、お金持ちのボンボンがパーティーを開いていると聞き、獲物を物色しに行く。そこで運悪く目をつけられたのが、マルティン(ジャン=ポール・ルルー)とカルラ(ミア・マエストロ)のカップルで、彼らはパーティー会場を出た所で拉致られてしまう。金持ちの父親に身代金を払うよう脅され、そのまま拘束される二人。しかし、その途上逃げようとした彼氏マルティンはギャングの怒りを買い、殺されてしまう。一人取り残されたカルラは好色な卑劣漢ブドゥに襲われそうになるも、リーダー格であるトレセはそれを許さず、仲間内には険悪な雰囲気が漂い出す‥‥。

それなりにアクションとかも撮れてて、たぶんかなり低予算な割には頑張っていると思われるものの、どうしてかあんまり面白くないのはおそらくヒロインが最後まで囚われの身で震えているだけっていう、その動かなさが原因な気がする。「貧困から悲劇的な犯罪が生まれてしまう」っていうこの映画の言わんとしてることは分かるものの、それを伝えたいが為にその渦中のカルラにはずっと怯えてるっていうだけの演技をさせてしまったような印象を受ける。仮に、ホントにこのギャングたちがマジで悪魔みたいにブチ切れてる人でなしだったら、その囚われの恐怖感は観てるこっちにトラウマを残す可能性もあるけど(『ホステル』とか?)、実際そんなに怖くないから単に「動き出さない犯罪アクション映画」になってしまった感が。

まあ、いきなりカルラが銃を奪って応戦するとかじゃなくても良いんだけど、「お前の着ているドレスで何人の人間が暮らせると思ってんだ?」っていうギャングの論理に対して、何らかの反抗があって然るべきじゃないかと思った。銃を片手にネチネチと脅しながら、さも当然のように語られる腐り切った短絡思考にいい加減カルラが怒髪点を衝いて、もう撃たれたって構わないわよ!っていう感じで考えつく限りの罵詈雑言を浴びせるとかさ。そういうシーンがあったらカッコ良かったのに。ジャパニーズ・ホラーに出てくる超常的な幽霊とかも一緒だけど、そういった絶対的な力関係の元で人に対して恨みや妬みをグチグチ言ってるようなネクラな相手に、きっちりそれ相応のカウンターを食らわしてほしい。その直後に殺されるなり、犯されるなりしても、そのカウンターの機会が有る無しじゃ全然ドラマの強度が違ってくると思う。



予告。↓

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2008年06月27日

サラ・ポーリー、監督デビュー。

サラ・ポーリー 『アウェイ・フロム・ハー 君を想う』(2006) ☆9.2

『死ぬまでにしたい10のこと』や『ドーン・オブ・ザ・デッド』などの主演でおなじみ、僕としても最近の女優さんの中では一番好きなサラ・ポーリー(29歳)の、念願の長編監督デビュー作です。ハリウッド嫌いで有名な彼女がかつて『ドーン・オブ・ザ・デッド』というハリウッド大作への主演を決めた理由をどこかで語っていたんだけど、ロメロのオリジナルのファンだということは勿論のこと、どことなくラブストーリーのヒロイン的に見られていた自分の体を血に染めたかったという趣旨のことを話していて、僕はそれを読んだ時にえらく感動した覚えがある。彼女は若手女優では珍しくかなり筋金入りの反戦活動家でもあって、政治デモに参加した学生時代に奥歯を二本折ったという武勇伝は結構有名な話らしいんだけど、でもどこか軽やかな印象が彼女にはあってそこが魅力的。日本の左翼みたいにどことなく苦しそうな感じじゃなく、非常にニュートラルな雰囲気というか。で、そんな彼女の長編デビュー作である本作は、アリス・マンロー原作の素晴らしくピュアなラブストーリー。以下、あらすじです。↓

結婚して40年になるフィオーナ(ジュリー・クリスティ)とグラント(ゴードン・ピンセント)の二人は、カナダの大自然の中でひっそりと穏やかな晩年を過ごしている。しかし、そんな幸福な日々に影を落とすかのように、妻のフィオーナは認知症を発症してしまう。徐々にその症状は進行し、ついには反対する夫を宥めつつ自ら老人ホームに入ることを決めるフィオーナ。「状態が良くなれば、また一緒に暮らせるから」とグラントを励まし家を出たフィオーナだったが、施設の規則である最初の一ヶ月の面会禁止期間を経て、逸る気持ちで施設を訪ねたグラントが見たのは、夫である自分のことを忘れ、同じ施設仲間のオーブリーという男と仲睦まじくゲームに興じるフィオーナの姿だった‥‥。

グラントはどうにかしてフィオーナに二人で暮らした日々のことを思い出してほしいと毎日施設に通い、彼女に語りかけるんだけど、でもそれは結局彼女を苦しめることにしかならない。「やめて、お願いだから‥‥彼(オーブリー)は私を混乱させないわ‥‥」と最愛の妻から告げられたグラントは、もはや他の男と夫婦のように振る舞う彼女を見守ることしか出来なくなり、「彼女は僕に罰を与えているんじゃないか」と若き日の自分の行いを悔やみ、苦悶する。青年時代のグラントは、そのルックスもあって他の女性との浮気をくり返し、何度もフィオーナを裏切った過去があって、グラントはそれ以来自責の念に苛まれていて、これがかつての過ちの報いなのか、と後悔と孤独感を募らせていく。

言葉少なにただただ施設内のソファに座ってフィオーナの姿を見つめているグラントをゴードン・ピンセントという俳優が演じているんだけど、どことなく最近のビル・マーレイな感じの切なさを醸していて、その佇まいが悲しくも瑞々しい。もはや、そこにいる男は晩年を生きる初老の男性じゃなくて、ほとんど叶わない初恋に身をやつす少年のようなそんな恋心だけがあって何となく可愛らしい。親戚を見舞いに嫌々施設を訪れたっぽいパンク少女が出てくるシーンがあるんだけど、「彼女の為にはこうやって見守るしか出来ないんだ、情けない夫だろ」っていうグラントに対して、そのパンク少女が彼に握手を求めて肩をポンポンって叩く非常に良い場面があって、ここにはやっぱりそういう年齢差を超えたピュアネスが感じられ、非常にうるうるきました。その想いや喪失感っていうのは、何十年生きようともそのつど心を揺さぶって止まない。『ミリオンダラー・ベイビー』のイーストウッドをちょっと思い出しました。

まだ公開中だと思うんで、気になった方は劇場へ。



公式サイト。↓

http://www.kimiomo.com/

予告。↓


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2008年06月25日

HEROを観賞。

鈴木雅之 『HERO』(2007) ☆4.0

フジで放送していたキムタク主演の法廷ドラマの映画版。キャストはTV版に引き続き、キムタク、松たか子、阿部寛や大塚寧々などが参加。監督はあの『NIN×NIN 忍者ハットリくん THE MOVIE』を撮り、そして数多くフジテレビのドラマを演出してきた鈴木雅之(ラッツ&スターの人じゃありません)。なんていうかとりあえず出来はヒドいんだけど、それよりももはやこの無邪気な正義感っぷりは僕の生きている世界とは別の世界の話のような、そんなある意味不思議な映画でした。以下、あらすじ。↓

東京地検・城西支部に戻ってきた若き検事・久利生公平(キムタク)。ちょうど世間の話題は花岡練三郎(森田一義)という大物代議士の贈賄容疑で持ちきりで、そんな時、久利生は小さな傷害致死事件を担当する。それはあるキンパツ青年が一人のサラリーマンに対し暴行を加え、結果殺してしまって逃げたという事件で、最初キンパツは容疑を認めていて楽勝な雰囲気だったんだけど、なぜか公判を迎えるいなや一転して容疑を否認し始める。彼の弁護にはなぜか大物敏腕弁護士・蒲生一臣(松本幸四郎)が立ち、いかにも不自然な印象。というのも、実はこのキンパツの証言(事件当夜、バイト先の警備員室に待機していた)によって花岡練三郎のアリバイが成立するという構図になってて、そのために花岡側が大物弁護士の蒲生を送り込んだのだった。それを知った久利生はなんとかキンパツのアリバイを崩そうと奔走するのだが‥‥。

ツッコミ所を上げていくとキリがない感じなんですけど、一番気になったのが基本的な映画技術のセオリーみたいのがここには見当たらないっていうところで、まあそういうのを気にしない人にとっては特に問題なく観れるのかもしれないんだけど、僕にとってはすごく違和感だらけだった。ちょっとイメージしてほしいんですけど、例えば、人物が@・A・Bと並んで座っているとして、@+Aの正面からのツーショットの会話を撮った後に、A+Bの同構図のツーショットに切り替わるんですよ。Aがキムタクで、@とBが交互にAに話しかける感じで、だからキムタクが画面の右へ左へ瞬間移動するみたいになるんですね。これが非常に目まぐるしくて、誰が喋ってるのかスムーズに認識できないんですよ。

同じような違和感は他のシーンにもいっぱいあって、長い廊下をこっちと向こうから歩いてくる二人の人物がいるとするでしょ。で、二人が近づきながら相手に声を掛けるんだけど、最初は手前にカメラがあってスーッと画面奥に廊下がまっすぐ伸びている結構引きのカットで、向こうに歩いていく男の後ろ姿と向こうから歩いてくる男の正面の姿が見える風になってるんです(分かりますかね?)。まあ、別にここまでは良いんだけど、次のカットで後ろ姿のヤツが向かいの男に話す瞬間にこのカメラが廊下の真反対に飛ぶんですよ。つまり、後ろ姿のヤツが正面になって、正面のヤツが後ろ向きになるっていう全く裏返しの構図。で、会話が二人の間で3、4往復するんだけど、その間ずっとこの真逆の同構図の切り返しで撮ってて、もう訳分からんかった。二人とも黒のスーツで同じような格好してるし、廊下は切り返しても絵的に変化ないし、まさに二人が左右に瞬間移動してるっていうか、書き割りの人間が交互にくるくる回ってるみたいな感じで、なんかすごく不思議で、えらく観づらかった。

例えば、わざとセオリーを逸脱してみせてるならまだしも、これはそういう感じではない気がする。すごく無邪気に素直に撮ったらそうなっちゃったっていう。それは上の方にも書いたストーリー展開における無邪気な正義感っていうか、つまるところ「幼稚だなあ‥‥」っていう感じにも通じるような気がします。だって松本幸四郎、法廷でのキムタクの熱意にほだされて自分で負けを認めちゃうからね。「なんで弁護しないんだ!貴様!」って証人席で叫ぶタモリがなんか可哀想だったな‥‥。



予告。↓

映画HERO予告ムービー[アメーバビジョン]
タグ:邦画
posted by ケニー at 01:45| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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