2008年10月17日

監督‥‥。

北野武 『監督・ばんざい!』(2007) ☆8.0

新作『アキレスと亀』がただ今公開中である北野武監督の『TAKESHIS’』に連なるような自己言及的な問題作です。一応プロモーションではコメディっていうことで銘打って公開したみたいですが、僕の感想としてはこれはコメディとかじゃなく、なんていうかとても悲しくも空虚な映画でした。たけしは一体どこへ行ってしまうんだろうか‥‥。とりあえず、簡単にあらすじを。↓

「もうギャング映画は撮らない」と公言した「世界のキタノ」こと北野武監督だったが、しからばどんな映画を撮ったらいいのか一向に分からず、一人苦悩している。小津のようなモノクロで古風な日常モノを撮っても今の時代ではまず流行らないし、愛と涙のラブストーリーも思いつきだけでパッとしないし、「昭和30年代ブーム」に乗って自らの少年時代の状況を活写しても、そこには貧困や差別ばかりで暗くなってしまうだけだし、ましてや時代劇は『座頭市』でやってるし、ホラーは怖くないしで、「もう、どうしたらいいんだ!」という感じの北野監督。もはや残された道は、岸本加世子と鈴木杏の母子が織りなすシュールなコメディ路線しかないと藁にもすがる思いで撮り始めるものの、話はどんどん破天荒で支離滅裂な方向へ進んでいき‥‥。

bannzai-01.jpgという訳で、本作は主人公が監督本人であるというメタ・フィクショナルな形式になってて、そんな監督の下でいろんな案の映画が撮られる中『TAKESHIS’』同様にシュールでナンセンスな展開が巻き起こることになる。本作の最初のカットがある意味で象徴的なんだけど、監督の北野武の横には劇中ずっと監督を模した等身大の人形がくっついて回ってて、この人形が冒頭でCTスキャンに掛けられてるんですね。で、当然ながら中身は空っぽで、もはやこの時点でこの映画の語らんとしてることが言い尽くされた感じ。「俺には何もない」っていうか、「何もない」っていう事実だけが「ある」っていうか。とにかく観てる間中、辛かったです。

ちょっと前のエントリーで『Helpless』の浅野忠信演じる健次について「完全にぶっ壊れた非人間的な男」って書いたんだけど、なんとなくたけしにもそういう自暴自棄感というかそんな感じが見てとれました。おそらく映画はスゴい好きだし、小津や黒澤明やその他の巨匠を敬愛してたりするんだろうけれど(蓮實と対談してたりするし)、だからこそ自分にはもうすることがない、自分にはもはや何も出来ないっていうことになって、だったらもうどうでもいい、何をしたところで「世界のキタノ」っていう一個の消費財に過ぎないし、映画なんて元々そんなもん、みたいな心底シニカルな思考に到ってしまうんじゃないか。そもそも頭の良い芸人って松本人志とかみんなシニカルだと思うし。なんとなくTVタックルとかのたけしを見てても、そういうシニシズムというか「別に政治とか俺の出る幕じゃないし、ハハハ‥‥」みたいな感じがちょっと窺えるし、辛そうなんですよね。今期から始まったブロード・キャスターの後枠の司会にもなったみたいだし‥‥。別にたけし批判とかじゃなくて、非常に暗い影が落ちてるように見えて、心配です。タランティーノとかを見習ってほしい。

たぶん、僕はもうたけしを見て腹抱えて笑うようなことはないんじゃないかとぼんやり思います。自殺とかしなければいいけど‥‥(僕のことじゃないよ、っていうか今回のエントリーやたら暗いな)。



予告。↓


ラベル:コメディ 邦画
posted by ケニー at 01:42| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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