2007年12月08日

ジャック・ケッチャム。

本のレビューです。

『襲撃者の夜』 ジャック・ケッチャム ★8.2

現代最凶モダン・ホラー作家、ジャック・ケッチャムが自身のデビュー作である『オフシーズン』の舞台を再び使って描く、あれから11年後の物語。ケッチャム作品といえば凄惨な殺人場面や残虐な描写が当然のように出てくるけれど、それはエンターテイメントとしての一つの要素に過ぎなくて(ここも大いに読み応えがあるけれども)、重要なのはそこに示されているテーマというか思考実験(あるいは人体実験?)のドキュメントみたいなものにあるんだと思います。極限状況においては生命の臨界点も倫理の臨界点も限りなく曖昧で、それが一番恐ろしい。恐怖の洗礼をバシャバシャ浴びたい方は一作目の『オフシーズン』から読んでみることをオススメします。



ケッチャムの原作『The Girl Next Door』の予告です(公開日未定)。↓






『極西文学論 Westway to the World』 仲俣暁生 ★7.0

文芸評論家あるいはフリー編集者、仲俣暁生の『群像』の連載をまとめた現代文学論。サイモン&ガーファンクルから始まり、舞城王太郎、ヴォルフガング・ティルマンス、阿部和重、ジャック・ケルアック、『地獄の黙示録』、村上春樹、ビートルズ、吉田修一などといった固有名を巡りながら、「西」への運動をキーワードに小説の可能性を探っていく。一見バラバラなそれらの固有名が「西」というタームによってことごとく繋がっていくのは確かに小気味良いけれど、どことなく強引な印象も拭えない。でも、それはおそらく著者自身気付いてることで、むしろ強引にでもいいからこれらの作家を「極西文学」とでも呼んでしまおうと考えたんじゃなかろうか。んで、たぶんその呼び名は実は何でも良くて、それは捉え難いモノに形を与える為の作業であって、それがきっと著者の言うところの「どこかへ向かう運動を生み出す契機」になるんだと、僕は解釈しました。僕はその手法っていうか奔放な想像力を否定しないし、むしろ、だったらもっと広範囲にデタラメに論じてくれたらさらに面白かった気がする。ま、でも評論ってそんなデタラメじゃ駄目なのかしら、やっぱり。これの続編とも言えそうな『「鍵のかかった部屋」をいかに解体するか 』も読んでみたい。



著書の中で取り上げられてた、サイモン&ガーファンクルの「アメリカ」↓






『アメリカン・サイコ』 ブレット・イーストン・エリス ★7.6

そのスキャンダラスな内容のために91年当時、やたらと物議を醸したエリスの問題作。昼間はウォール街で働くエリートビジネスマンである一方で、夜は異常性欲に突き動かされ殺人を繰り返す、主人公のパトリック。彼の目に見えているのは、誰がどのブランドの服を着ていて、どのランクのレストランに行って、誰がどんな高級な人間と親しいのかといった「ブランド至上主義」的な価値基準と、ベッドや床の上やシンクなどに広がる人間の臓物や血溜まりや頭部などのかつて人間だった「モノ」との二つしかない。その為に、この小説はあらゆるブランド名の羅列と、娼婦たちが殺されていく描写が圧倒的に多くのページを占めていて、この小説の何が最も異常かというと、そのアンバランスな構成なのだった(一人称で書かれているので、つまりこれがパトリックの価値観になる)。夜の殺人描写の細やかさと比べると、昼間の抽象的で記号的な描かれ方(ウォール街という立地条件から金融関係だと予想できるけれど、主人公が具体的に仕事をしている場面など一切ない)はさらに気味が悪く、途中からある男の妄想を読まされているような気になってくる。さながら実験小説のようなヤバさ。



映画『アメリカン・サイコ』予告↓

タグ:小説 評論
posted by ケニー at 02:11| Comment(0) | TrackBack(1) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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