(*一応ネタバレ注意)人種問題などの社会派といわれるような映画を撮ってきたスパイク・リーだけど、これは銀行強盗モノの犯罪映画。所々で差別的なものに対する監督の批判的な立場が見受けられるけれど、今回はそれ程でもないのかな、と思いきや最後のオチがナチスだからやっぱりスパイク・リーと差別は切っても切り放せないのだと再認識。僕としてはそういった大層な陰謀論的どんでん返しや、映画の大半を占める銀行強盗の華麗な手口や警察との駆け引きなどはあまり興味が持てず、高飛車エリート弁護士役で出てくるジョディー・フォスターがカッコいいなあとばかり考えてた。2004年にスピルバーグの『ターミナル』っていう作品があったけど(こっちはスゴく良かった)、『インサイド・マン』はちょうどそれの大風呂敷を広げてしまったバージョンっていう感じで、そういった意味で失敗してる気がする。もしも、『ターミナル』の最後がなにやら大層なオチだったら完全にダメだったでしょう、それと似たような感じ。
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デヴィッド・クローネンバーグ 『ヒストリー・オブ・バイオレンス』(2005) ★8.8
生理的嫌悪を掻き立てる触手&粘液系映画で有名なクローネンバーグ監督ですが、これはかなり真っ当なアクション・サスペンス。クローネンバーグがここまで高硬度なアクションを撮ったのは『イグジステンズ』以来ではなかろうか、というぐらい凄まじいまでの暴力のリアリティ。主人公トムを演じるヴィゴ・モーテンセンの化けの皮が剥がれ出したあたりから、「そう!そう!コレコレ!」っていう感じでもう僕はわくわくしっ放しでした。思うに、アクション映画においては主人公である「善」が敵である「悪」と対決してゆくうちにお互い似たような「モノ」になっていくそのダイナミズムというか、無自覚な残酷さの発動というかそういった上辺の道徳心が削げ落ちてからの展開が最もエキサイティングになるような気がしますね。やたら強烈なモノが観たいっていう人におすすめ。
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