『パッション』でキリストの磔刑を描いたメル・ギブソンが次に選んだモチーフは、何とあのマヤ帝国。舞台はマヤ文明後期の中央アメリカの密林で、そのマヤ帝国の生け贄として拉致された異なる部族の青年パウが主人公。持ち前の俊足で命からがら脱走したは良いもののそっから息も尽かせぬジャングル内での逃走劇が始まる訳です。ジャガーが牙を剥いて追いかけてきたり滝壺に飛び込んだり底なし沼にハマったり巨木が倒れてきたりで、もうハラハラがドキドキの連続。インディー・ジョーンズmeets食人族といった感じで全く残酷描写に容赦ない。前作もそうだけど、監督メル・ギブソンのこの奇妙なスケールのデカさは一体なんなんでしょうか?他に類をみない誇大妄想監督っていう感じで、この人は非常に貴重な想像力の持ち主だと思う(まあ、彼がキリスト教原理主義者だっていうのが大きな理由の一つではあると思いますが)。マヤ遺跡の当時の様子を再現したカットなど必見。スゴい。
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マイケル・ウィンターボトム 『グアンタナモ、僕達の見た真実』(2006) ★7.8
悪名高きグアンタナモ収容所の実情を、実際に無実の罪で収監された3人の若者が語った再現ドラマによるドキュメンタリー作品。グアンタナモ収容所というのはキューバ東部にあるアメリカの基地で反米テロリストを収容する施設。「悪名高い」というのは、捕虜に対するここでの非人道的な扱いのことで、その内実が本編の中で描かれる。容疑をかけられた者たちはもう全くここでの自由はなくなり、毎日同じような尋問を受け、2週間のうちで5分間だけしか歩くのが認められなかったり、目隠し状態で拘束されたまま5、6時間ぶっ通しでヘビメタを爆音で聞かされたり、命令に従わなければ5人一組の「スーパー封殺隊」(ホントにこう呼ばれてるらしい)にボコボコにされるなどといったことが、ここでは日常的に行われている。ここに収容されているのはあくまでも「容疑者」であって、テロリストだと決まった者ではないんだけど、上記のようなことが今現在でも続いているっていうのが恐ろしいし、不毛だとしか思えない。これもまたキリスト教原理主義者の生み出す別の現実。
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