2008年01月24日

硫黄島から。

クリント・イーストウッド 『硫黄島からの手紙』(2006) ★9.0

前作『父親たちの星条旗』に続く「硫黄島」二部作の日本軍側からの視点で構成された二作目。僕は『父親たち〜』を公開当時に劇場で観たんだけど、何故かこの『硫黄島〜』の時は出不精故か劇場に足を運ばなかったその不義理をいま後悔しています、というぐらいにこれは傑作でした。いろいろ感想を読むと、往年のイーストウッドファンにはこの2本はあまり受けが良くなかったような感じを受けますが、僕としてはこのあまりにも真っ当な、お手本のように作られた戦争映画をあのイーストウッドが撮るということに凄みを憶えます。この映画には、一つ一つ丁寧に生き延びる可能性を摘み取っていくようなリアルな残酷さがあって、中でもあまりにシビア過ぎてクラクラしたのが加瀬亮演じる清水が戦線を離脱し、一人で米軍に投降して捕虜になるんですが(もちろん戦場から逃げるっていうのは兵士としては最大の汚名で、ここまでにすごく葛藤があります)、見張りを任された米兵がその任務の面倒臭さ故に(!)あっさりと清水を撃ち殺す場面があって、僕は「ああ、これで清水は助かったんだ」って思っていた矢先だったんで、これにはホントに自分が殺されたかのようなショックを受けました。そこからはもう何ていうか、「あ、やっぱり死ぬしか道はないんだ‥‥」っていう完璧な閉塞状況に追い詰められて、あの当時の硫黄島における日本兵の寄る辺なさみたいなのをにわかに追体験できたような気すらした。
本当に唯一、この映画に救いがあるとすると、それは二宮くん演じる西郷にしかなくて、彼はここでは現代に生きる青年のようなパーソナリティを持った人物として描かれていて、その場違いな軽薄さにどうしようもなく感動させられます。特に僕の大好きなシーンがあって、上官に命令されて、西郷が便器に溜まった糞を嫌々ながら捨てにいく途中で銃撃されるところなんだけど、命からがら逃げながらも天に向かって「まだ見離してなかったのね、良いとこあるじゃんアンタ」みたいな軽口を吐くっていう場面で、これにはホントに感涙させられました。こういう状況下にこういった軽さをスッと差し挟むことが出来るっていうところに、ヴィヴィッドな生命力というかバイタリティというかタフだなーっていう感じを受けて、嬉しくなります。おそらく、こういった人物を主役に据えたっていうことがこの映画の最大の魅力で、やっぱりイーストウッドは今もって現役の映画監督なんだなと思って非常に感心しました。さすがです。



予告。↓

posted by ケニー at 23:38| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。