2008年02月18日

MOGARI。

河瀬直美 『殯の森』(2007) ★7.0

2007年のカンヌ映画祭で女性監督初の審査員特別賞を受賞した話題作。舞台は奈良市郊外の茶畑に囲まれた老人ホーム。自分の不注意から我が子を不慮の事故で失い、自らを責め続ける介護士の真千子と、33年前に最愛の妻を亡くし現在認知症を患っているしげき。二人は最愛の者を亡くした同士、徐々に心を通わせながら過去にケリをつける為、しげきの奥さんが眠る 「殯(もがり)の森」へと出掛けるという生と死を巡る魂の物語。僕は河瀬監督の『萌えの朱雀』も観てなくて今作が初めての河瀬作品だったんですが、観る前にイメージしていた通りの人間っていうものの実存を巡る映画という感じで、個人的に苦手といえば苦手な類いの話だったんだけど予想していたよりはすんなり観れたような気もするし、全体の丁寧な作りには好印象を持ちました。しかしながら、以前にも書いた通り、僕は「生き直し」っていうことにあまりリアリティを持てない性格の為かイマイチこの話の根幹の部分に共感できなくて、半ば傍観者的な冷めた見方だったのも確かです。今作を観て何となく僕が思ったのは、河瀬直美っていう人は魂の存在を確信しているような人で、それはつまり映画でいえばそれがそもそも虚構だっていうことをあまり前提として考えてないというか、対象に肉薄すればするほど本来その人間の持っている真に人間的な部分に近づけるっていうか、そういうロマンティックなところがあるんですね。だから登場人物は非常に内面的だし、役者もみんな素人役者で本名のまま出てるし、あたかもリアルでドキュメンタリーな感触があるんだけど、でもそれはちょっと素朴に過ぎるんじゃないかと僕なんかは思ってしまう。前に『硫黄島からの手紙』で二宮君演じる西郷についてちょっと書いたけれど、ああいった悲惨な状況下で、しかし場違いな軽口を吐けるっていうそのフィクショナルな部分に僕は感銘を受けたんだけど(実際の戦場ではまずあり得ない)、『殯の森』ではそういった現実的には不自然な言葉っていうのを丁寧に排除していった結果、リアルっぽい雰囲気を作り出してるだけっていうような気が僕にはして、それ故にどこか嘘っぽさを感じる訳です(僕の性格がひねくれてんのかな?)。ラストシーンで、しげきが奥さんの墓の前でオルゴールを奏でるところがあるけれど、例えば(河瀬監督は絶対やらないと思うけれど)、そこで音楽を奏でるのがオルゴールではなくて、森の中でずっと電波が通じなかった真千子の携帯がその時不意に鳴ってそこから印象深い着メロが流れてくるとか、そんな場違いなことが起ころうもんなら僕はきっと感涙したに違いないんですが、この映画はそんな可能性を全く許容しないようで、そこがどうにも重苦しいんですよね。別に何でもかんでもライトにいこうよっていう訳じゃなくて、重さや深さだけじゃ語りえないリアリティがあるんじゃなかろうかと、つまりそういうことです。



予告。↓

タグ:邦画 カンヌ
posted by ケニー at 02:58| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/88462553

この記事へのトラックバック
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。