2008年04月29日

手紙です。

生野慈朗 『手紙』(2006) ☆8.0

東野圭吾原作の同名小説を、山田孝之、沢尻エリカ、玉山鉄二などを出演者に迎えて映画化。玉山演じる武島剛志は、ある資産家の家に強盗に入り、出くわした老婦人を誤って刺し殺してしまい服役している受刑者。その弟である直貴(山田孝之)は、そんな兄を励まそうと欠かさず手紙をやり取りしているんだけど、殺人者の弟に対する社会の風当たりは強く、会社の誰とも心を通わせずにひっそりと生活している。でも、直貴にはお笑い芸人になりたいという夢があって、中学時代からの親友と二人で昼休みに漫才の練習をしたりしていて、それを食堂の調理場から嬉しそうに眺めているのが、沢尻エリカ演じる由美子。この後、直貴はお笑い芸人として頑張っていこうと決心し、その努力も徐々に報われて期待の新人コンビみたいになっていくんだけど、ここでもまた実の兄が殺人者だということが世間にバレてしまい、決まっていたCMなどがオクラになって、これ以上相方を巻き込むのは忍びないと考えた直貴は自らコンビを解散してしまう。再び職場を転々としながら、こんな状況を招いた兄貴に対する憎しみが募り、直貴は手紙をいつしか書かなくなり、兄からの手紙だけがどんどん増えていく‥‥。
これは加害者の家族に対する世間の差別感情をモチーフに「贖罪」というテーマを描いたなかなか重いドラマだと思うんですけど、そこに結構唐突に出てくる「お笑い」っていう要素がいいなーと思いました。そのギャップっていうか重々しいからこそ笑うんだっていう心持ちがすごく健全でポジティブな意識だと思うし、『ナチョ・リブレ』とか『バス男』とか思い出したんだけど、でも今作はコメディではないんですね。映画のラストで、元相方からの誘いで一日だけ芸人に復帰した直貴が、兄の服役している千葉の刑務所に慰問に行ってネタをやるっていう『ウォーク・ザ・ライン』みたいなめちゃくちゃ良いシーンがあるんだけど、ちょっとやっぱり湿っぽい。まあ、そもそもシリアスなドラマだし、クライマックスだからそういう感じになるとは思うんだけど、この最後の舞台でこそ観てるこっちも腹を抱えて笑えるめちゃくちゃにバカバカしい芸が、僕としては観たかったな。悲惨な現実に立ち向かうために選んだ武器が「笑い」っていうところまではすごく良いし、かなり傑作な予感がするんだけど、でもそれにしてはその「笑い」の精神がこの映画には足りないような気がしました。これだとお笑いじゃなくて、ミュージシャンとかでもあまり変わらないというか、「笑い」によって救われている感じがあまり伝わってこなかった。でも多分、制作者的には「笑い」よりも沢尻エリカの担う「愛」こそがこの現状を救うんだっていう意図で作っていると思われ、確かにそれはよく分かるし、相変わらず沢尻エリカも好演してるんだけど、そうなるとやっぱり芸人にする必要性が僕にはピンときません。むしろ芸人だったら絶対、殺人者の兄貴をネタにして笑いを取るしかないと思うし、その姿にこそ感動するんじゃないかな。



予告。↓


タグ:邦画
posted by ケニー at 02:28| Comment(2) | TrackBack(0) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ぼくこれはダメでしたー。俳優にお笑いやらせたってどうやっても面白くならないから劇中空間とそれを見てるこっち側の映画館の中でと二度スベッてる感じがして、かつそれがラストの感動に使われるとことかが、いくらなんでもそれは無理でしょー、って感じだったなー。
Posted by ほと at 2008年04月29日 12:12
どうも、ご無沙汰です。

芸人じゃない役者がお笑いやるのは確かに冷や冷やものですよね。まあ、ネタがさぶいのはしょうがないとしても「笑い」の精神をもっと健気に突き詰めてたら、かなりイイ映画になったと思うんだよね。とある芸人の生き様みたいな感じで。
Posted by ケニー at 2008年04月29日 14:46
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/95031121

この記事へのトラックバック
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。