2008年05月12日

幸せのちから。

ガブリエレ・ムッチーノ 『幸せのちから』(2006) ☆8.4

ウィル・スミス演じる主人公クリス・ガードナーは「骨密度スキャナー」という高級医療機器を売り歩くセールスマン。勧誘して会員を増やしていくようなマルチ商法なシステムではないけれど、何台もの機械を自腹で購入している為にこれが売れないと生活費を賄えない。しかし、毎日何件も病院を訪れるもののこれが思ったようには売れず、その生活苦からパートに出ている妻のリンダと毎夜口論が絶えない。終いにリンダは家を出て行ってしまい、五歳の息子クリストファー(ジェイデン・クリストファー・サイア・スミス←ウィル・スミスの実の息子が演じてます)との二人だけの生活が始まる。なんとかこの状況を脱しようと決心したクリスは、ある証券会社の仲買人育成プログラムに志願することに。この半年のプログラムの後、20人の中から1人だけ正社員として採用されるっていうことで、「骨密度スキャナー」を売って糊口を凌ぎながら会社でプログラムを受けるという多忙極まる生活を送ることになるんだけど、滞納しまくっていた税金の支払いが強制的に執行され、クリスら親子は無一文の身の上になってしまう‥‥。
冒頭で印象に残っているシーンがあってホロッときたんだけど、クリスがセールスの最中に証券会社の大きなビルの前で立ち止まってその社員たちの表情を眺めながら、「みんなとても幸せそうだ、僕もあやかりたい」っていうナレーションが入るんだけど、そのすごく素直で前向きな感慨に僕は予期せずちょっと動揺しました。っていうのも、僕はそういう人間たちを目の前にしてきっとそんな素朴に「あやかりたい」なんて思えなくて、むしろなんかイヤな奴らだと思ってしまうんじゃないかと感じたからで、ここでどういった風に思えるかでこの話は全く別の様相を呈するような気がする。もし、クリスが彼らに対してある種の憎悪を感じていれば、おそらく『タクシードライバー』のトラヴィスのようになっていってしまうんじゃないか。僕の中にそういった嫌なルサンチマンがあるからよりそう感じるっていうのもあると思うんだけど、そこで上のように思えたクリスはやはりそういった成功に向けた素地があったんだろうな、と。それこそ「僕もあやかりたい」。クリスは14ドル貸してる友人に対して「すぐに返せ!」って息子の前で怒鳴ったりして、とにかくお金に執着しっぱなしなんだけど、それは単純に息子と二人で生きる為に必要だからで、そのバイタリティは以前紹介した『ホテル・ルワンダ』のポールにも共通してる切実な凡庸さというか、当たり前の意思なんですよね。人によっては今作を観て、新自由主義を推奨してるとか拝金主義だとか思うのかもしれないんだけど、これはそういったこととは全然関係なくて、ただ幸せになる為に努力するそのバイタリティをストレートに描いている極めて感動的な作品だと思います。



予告。↓


posted by ケニー at 02:11| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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