2008年10月06日

大帝の剣。

堤幸彦 『大帝の剣』(2006) ☆5.1

最近『20世紀少年』が公開されたばかりの堤幸彦監督によるアクションSF時代劇です。原作は夢枕獏の伝奇小説。どうやら本作は、今年(2007)の4月に公開されていたらしいんだけど、しかし全然その名を聞かなかったような‥‥。まあ、凡作故でしょうか。とりあえず、簡単にあらすじです。↓

舞台は江戸幕府三代将軍・家光の時代。阿部寛演じる巨漢の流浪人・万源太郎は、その背に無類の大剣を携え、旅をしている。それは地球外の謎の物質・オリハルコンで作られた三種の神器の一つ「大帝の剣」。三種の神器を全て集めた者は強大な力を得ることが出来るという言い伝えがあり、かつての権力者たちは血眼になってそれらを探し、奪い合ってきたのだが、源太郎は祖父の遺言を受けて争いを終わらせる為に他の二つ「闘神の独杵鈷」と「ユダの十字架」を求めて旅を続けている。その最中に、行き掛り上助けた女が豊臣のお姫様・舞(長谷川京子)で彼女を守る為のお供をするハメになり、しかし、そんな中徳川方の刺客・破顔坊(竹内力)やら宇宙から飛来してきた謎の生命体やらもまたオリハルコンで作られた三種の神器を求めて、源太郎一行に襲いくるっていう、まあ、そういう話です‥‥。

taitei-01.jpg例えるなら『どろろ』とか北村龍平の『VERSUS ヴァーサス』とか『あずみ』とか、あと『五条霊戦記//GOJOE』とか、ああいった時代劇にSF的な奇想を盛り込んだ感じの一本ですね。まあ、いろいろダメな部分はあるんだけど、僕のモチベーション的にもネチネチ突っ込むのはパスしてですね、ちょっと一番気になったとこだけ言っておこうかと。ここに出てくる三種の神器なんだけど、どうやら設定として最終的にはその物自体が使う人を選ぶっていうことで、まあ、そういうのはよくある設定だと思うんだけど、でもだったらそんなの別に放っておけばいいじゃんって思うんだよ。だって選ばれし者とかそもそも決まってんだったらもうどうすることも出来ないじゃないか。そして、どうしたってその選ばれし者は源太郎しかいないし、なので僕は非常にのほほんと観賞していました。どんな悪人に神器が渡ろうと源太郎しか使えないから安心、安心っていう。例えば、この武器が現代で言う核爆弾みたいな物を象徴してるなら、それは誰もが使えないとオカシイし、全然脅威にならないと思うんですよね。まあ、予定調和つまんねえっていうことなんだけど、結局‥‥。

あ、唯一フォローしとくと謎の美形剣士役で出てくる黒木メイサはかなりカッチョ良かったです。あれは腐女子が放っとかないでしょう。



公式サイト。↓

http://www.taitei.jp/index.html
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2008年10月01日

夕凪の街 桜の国。

佐々部清 『夕凪の街 桜の国』(2007) ☆8.7

平成16年度の文化庁メディア芸術賞マンガ部門大賞、第9回手塚治虫文化賞新生賞を受賞したこうの史代の同名マンガを、『半落ち』、『出口のない海』の佐々部清監督が実写映画化。原作マンガの方も以前読んでいてそっちも傑作でしたが、映画版の方も重いテーマながら非常に爽やかで鮮烈な印象でした。良いです。以下、あらすじです。↓

広島に原爆が投下されて13年後の昭和33年(1958年)、父と妹を原爆で失い、幼い弟・旭は水戸の疎開先である石川家に養子として引き取られていき、小さな会社の事務員として働く長女の皆実(麻生久美子)は母親のフジミ(藤村志保)とともに二人で慎ましい生活を送っている。そんなある日、皆実が仄かに想いを寄せていた会社の同僚・打越豊(吉沢悠)から、思いがけず愛の告白を受ける。願ってもない申し出に喜ぶ皆実だったが、不意に死んでいった妹らの記憶がフラッシュバックし、彼女は打越の申し出を拒絶してしまう。13年前のあの日以来、「自分は本当に生きていていいのだろうか?」という疑念を抱き続け、その思いを吐露する皆実に、打越は「生きとってくれて、ありがとう」との言葉をかける。自分の存在がようやく承認され、皆実は打越と一緒に幸せになることを決意するものの、しかし、ここにきて遅れてやって来た原爆症の脅威が皆実を襲うことになるのだった‥‥。

yunagi-01.jpgここまでが「夕凪の街」と題された第一部。本作は二部構成になっていてここからは第二部の「桜の国」です。↓

舞台は移り変わって、50年後の平成19年(2007年)現在。石川七波(田中麗奈)は、父の旭(堺正章)、弟の凪生(金井勇太)と東京で三人暮らしをしている。ある日の夜、最近になって不審な外出をくり返す父・旭を心配した七波は、父の後を付けてみようと思い立つ。途中、駅前で幼い頃親友だった東子(中越典子)に偶然出くわし、彼女もノリに任せて尾行に参加。二人は気づけば八重洲口の深夜バス発着場にいた。父は当たり前のように広島行きのバスに乗り込み、七波も東子にお金を借りて一緒に乗り込むことに。着いた先、広島で父は何やら昔の知り合いであろう人たちを訪問しているようで、その父の姿を不思議そうに眺める七波。いくつか知人宅を回った後に辿り着いた墓地で、七波は「平野家ノ墓」と刻まれた墓石を目の当たりにする。そこには七波の祖母・フジミの名と並んで、伯母である皆実やその妹・ミドリの名など、かつての原爆によって亡くなった人たちの名が刻まれていて‥‥。

僕は原作の細かい部分は良く覚えてなくて、こんな展開だったかあんまり定かではないんですが、かつて原作に感じた非常に瑞々しい爽やかなイメージは本作でも良く演出されていて、良かったです。「原爆」というモノを描く時ってどうしたって旧来の左翼的な反戦思想が強く出ちゃってそれに囚われちゃうと思うんだけど(本作も実写映画ゆえか、監督の意向か、マンガよりもその傾向が強いような気がする)、こうの史代はそれを上手く現代的な感性の中に落とし込んで、より射程の広い表現を獲得しているような気がする。これは結構スゴいことです。それは「軽い」とか言うんではなく、かつての語り口よりも非常にセンシティブに「原爆」や「戦争」というモノに向かい合っているような、そんな感じです。

中でも印象的なのが、主人公の女性たち(皆実や七波)が語る一人称でのナレーションの言葉で、こういったとこの言葉のリアリティが天才的。原爆症で倒れた皆実がその心情を広島の方言で語るシーンがあって、そこで彼女はこんなことを言います。「なあ、嬉しい? 13年も経ったけど、原爆を落とした人は私を見て『やった!また一人殺せた』って、ちゃんと思うてくれとる? ひどいなあ、てっきり私は死なずに済んだ人かと思ったのに‥‥」、と。このセリフは非常に強烈でした。アメリカに対する皮肉とかそういうレベルの話じゃなくて、「原爆」や「戦争」のある現実を真に的確に射抜くような鮮烈で、非常に生々しい言葉に震えました。つい最近も、横須賀基地に原子力空母ジョージ・ワシントンが入港したっていうニュースをやっていたけど、なんかそういうことも含めていろいろ考えさせられる。オススメです。



予告。↓


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2008年09月28日

KOIZORA。

今井夏木 『恋空』(2007) ☆4.0

もう説明いらずだと思うんですけど、ケータイ小説を原作としたガッキー主演のラブストーリーです。以前、ラジオで社会学者の宮台真司がこの『恋空』を観て、「全くこれっぽっちも理解出来なくて、逆にスゴかった」と言っていたのを聞いて興味津々、やっと観てみたんですが、確かにこれはキツい。まー、とりあえず、あらすじです。↓

ガッキー扮する高校一年生の美嘉は、もう夏休みに入ろうかというある日の放課後、ケータイを無くしたことに気づいて校内を探すハメになる。お気に入りの場所である図書室で着信音を頼りにケータイを見つけた美嘉は、友人の亜矢(波瑠)だと思って電話に出ると受話器の向こうから「ケータイ見つかって良かったね、美嘉ちゃん」と、知らない男の声が。何者か尋ねても応えようとしないその男は、夏休みに入ってからもくり返し美嘉に電話を掛けてきて、最初はウザイし、気持ち悪いという態度を取っていた美嘉も、次第に相手の気さくで優しい雰囲気に惹かれていってしまう。そして新学期初日、誕生日プレゼントを渡したいからプールサイドで会おうと謎の男に言われ、いざ向かうとそこには以前廊下ですれ違ってガラの悪い印象を美嘉に残したキンパツ頭の同級生ヒロ(三浦春馬)がいて、美嘉は戸惑ってその場を立ち去ってしまう。しかし、ルックスとは裏腹なヒロの無邪気で心優しい一面を目の当たりにするうちに美嘉はやっぱりヒロのことが好きになっていって、二人は付き合うことになり‥‥‥‥。

koizora-01.jpgまあ、ここまでは導入で、ここからいろいろな苦難が二人を襲うことになるんですけど、一応、ネタバレ注意しておきます。で、これ以降の展開をさくさく行ってみますが、学校をサボってヒロの家でめでたく初エッチを済ませて最高にラブラブな二人、しかし、ある日いきなり美嘉はなんか分からんDQNな連中にレイプされてしまう。ブチ切れたヒロが犯人グループをボコった結果、主犯はヒロの元カノのサキ(臼田あさ美)だと判明。元カノに制裁を加えようといきり立つヒロを「一緒に居られればいいから」と宥めて、押し止める美嘉。しばらく学校を休んだ後、ヒロの献身的な愛によって精神を持ち直した美嘉は再び学校に通い始めるが、行ってみると教室中の黒板に美嘉を中傷する落書きが書かれており、ヒロは再びブチ切れて周りを取り巻く同級生に「今度こんなことしたら、ゼッテー殺す」と啖呵を切って、美嘉を図書室に引っ張っていく。美嘉は男気溢れるヒロを惚れ直し、感極まった二人はそのまま図書室でセックス。それによって美嘉は妊娠し、それを聞いたヒロも「おめでとう!一緒に育てよう!」と大喜び。お互いの両親に結婚の報告をし、順風満帆かと思われたが、再び嫉妬深いサキが絡んできて突き飛ばされた為に、美嘉は子供を流産してしまって‥‥‥‥‥と、なんだかちょっと書いててクラクラきたんで、話の展開を追うのはこんぐらいでいいか‥‥。

今、あらすじ書いていてびっくりしたんだけど、なんか異様にスラスラ書ける、この話。いつもはどういう風にまとめようか、結構悩んで時間掛かるんだけど、これはスゴく自動筆記的にどんどん書ける。なんかその「スラスラ書けちゃう感じ」がこの作品を象徴しているような気がする。というのも、本作には微妙なニュアンスとか複雑な立ち位置とかそういうのはなくて、誰が観てもきっと同じように受け止めるし、そうとしか受け止められないんじゃないかと思うんですよね。だから、あらすじを書くのも全然悩まなくていい。それはそれで大変ありがたいですが、いかんせん感情移入とか全然出来ません。

ここまで予定調和が進むと、もうそれは新たなジャンルだとしか言いようがないです。一番ビビったのが、美嘉がレイプされてそこにヒロがチャリで駆けつけるシーンで、ヒロに抱きついた美嘉が泣きながら「どうしてここが分かったの?」って言うとこがあって、僕はここで「きっとヒロが主犯なんだな、よしよし」とほくそ笑んでいたんですけど、そんなことは全くなく、ヒロはフツーに「愛の力で」って言うんですよ。んな、アホな‥‥。こことか絶対「ヒロがレイプに関わってるフラグ」が立ったと思ったんだけど、結局ホントに「愛の力」とやらで駆けつけたっていうことでスルーされるっていう、ちょっと本気で理解に苦しみました。なんなんだよ、だったらレイプ中に駆けつけて止めろよ、っていう。結局、脚本家(or原作者)の掌の上というか、どうとでも書けるんですよね。別にそれならそれで良いんだけど、だったらレイプ犯役とか突き飛ばして流産させる役とか脚本家か作家自ら出演して演じてほしいですよ。お前らが登場人物殺してんのに「運命」とか「因果」とかの所為にするなって、こういうの観ると毎回思う。『涙そうそう』とかも最悪だったしな。はあ‥‥。



予告。↓



posted by ケニー at 04:06| Comment(1) | TrackBack(0) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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